苗木 イタリアSPO
イタリアのフィレンツェから電車で1時間、トスカーナ州ペーシャの町で1932年から続くオリーブ専門の苗木会社SPO(Societa Pesciatina d’Olivicoltura)を訪問する機会がありました。
この会社では、25エーカーの敷地で、主要46品種(オイル用29、テーブル用7、兼用10品種)を生産しています。苗木は、挿し木(cuttings)と、1875年にこのペーシャの地域に導入された伝統の接ぎ木 (grafting)の二つの方法で生産していました。伝統の方法では、種を抜いてオリーブオイルを作るオイル農家から種を購入して、種から接ぎ木の台木を作成しています。
大学とトスカーナ地方の品種の共同研究も行っています。(2020年3月15日号)
品種 イトラーナ
オリーブの品種イトラーナ(Itrana)は、イタリアの首都ローマがあるラツィオ州、とりわけ南部のラティーナ県に広く広がる品種。シセローネ、タネラなど数多くの同義語があります。
樹勢は強く、直立に伸び密生した樹冠です。花は自家不和合で、受粉木が必要です。優れた受粉木は、ペンドリノ、レチーノ、オリバストロです。大きめの丸みを帯びた果実は、オイルとテーブルオリーブの両方に適しており、生産は常に安定しています。(2020年2月15日号)
品種 ピクアル
ピクアルはスペイン原産で、スペインのアンダルシア地域で最も大切な品種と言われています。同意品種名には日本でよく見かけるネバディロ・ブランコや、ネバディロ、ネバドー、ブランコ、サルガなど多数あります。
この品種は丈夫で、さまざまな気候や土地に適応します。とくに、寒さ、塩分、水分の多い土地に強いと考えられています。乾燥と石灰質土壌には弱いです。
大きく刈り込んだ後に、芽を出す強い力があります。花が咲く時期は普通で、受粉木のいらない自家和合です。実は比較的早く熟します。果実は取りやすいので、機械収穫が簡単です。
常に生産量が多く、オイルを多く含み、また育てやすく、中ランクのオイルが取れ ます。オイル の特長は高い 安定性とオレ イン酸の多さ です。総ポリ フェノールの 量も多い品種 とみられてい ます。(2019年12月15日号)
品種 レッチーノ
品種名レッチーノ(Leccino)(レッチコ、プリミック、シルバーストーンなど同意語名称)はイタリア原産でオリーブオイル用の品種の一つです。成長力強く、環境適応性が高い品種で、結実は早く、実が熟すのも早く、テーブルオリーブにも使用されています。自家不和合で、異なる品種の受粉木が必要です。
果実の生産量が多く、生産量も安定している品種で、原産国イタリアではトスカーナ、ウンブリア地方を始め広く栽培されています。近年は世界各国で生産されるようになっており、幾つかの寒さに強いクローンが報告されています。
イタリア中部、アブルッツォ州のアペニン山脈の標高500m程のところにあるオリーブ農園は、冬は雪が1m以上積もり、氷点下の日も多い所ですが、毎年コンスタントに生産しているとの報告がもあります。(2018年12月15日号)
品種 マンザニラディセビリア ゴルダルセビラナ
品種名マンザニラディセビリア、(マンザニラ、マンザニロ、ロメリロなど同意語名称多数)はスペイン原産で大きな実のテーブルオリーブ代表品種で、ポルトガル、米国、イスラエルなどでも広く栽培されています。スペインでは実が緑の早い時期に収穫しセビラノスタイルとして知られるテーブルオリーブを作り、米国では実が熟してから収穫するカリフォルニアスタイルのテーブルオリーブを作っています。
ゴルダルセビラナ(同意語ゴルダル、セビラノ、モラー)もスペイン原産で大きな実を付けるテーブルオリーブ用品種です。マンザニラは寒さに弱い品種ですが、ゴルダルはある程度の寒さに耐える品種ですが乾燥には弱いと言われています。
原産地名称保護制度は、EUが規定する食料品の原産地名認定・保護のための制度で、地理的表示保護(PGI:Protected Geographical Indication)は、定められた地域原産品を定められた製法で生産または加工、または調整されているものでなければならないとしています。スペイン南部アンダルシア州の州都セルビアはテーブルオリーブの世界最大の産地で、テーブルオリーブの品種マンザニラとゴルダルがいくつかの反対意見もある中、PGIとして認定されました。(2018年11月15日号)
品種 アザパ
16世紀にスペイン艦隊が南米ペルーにオリーブを持ち込み、リマに植えました。そのリマからチリに3本のオリーブの木が持ち込まれ、地中海性気候もありリマよりも良く成長。その後アザパ渓谷で成長したオリーブが“Sevillana de Azapa”と呼ばれ、チリの代表品種になりました。
20世紀になるとアルボサーナ、フラントイオ、レッチーノ、コラティーナ、コロネイキ、バルネアなどオイル用品種が導入され広がっています。品種アザパは、実が特に大きくオイルの含有量は少ないので主にテーブルオリーブに用いられています。(2017年12月15日号)
品種 シュトウェイ
スペインに続くオリーブオイルの生産国(2015年)チュニジアの主要品種はシュムラリ、シュトウェイ、メキスなどです。そのシュトウェイ種が約100本千葉県で栽培されており、開花結実の時期を迎えていました。
チュニジアの北部地中海の沿岸で最も栽培されている品種です。良質なオイルが採れ、また黒いテーブルオリーブ用にも使われています。樹勢は強くありません。自家受粉します。寒さや塩分に対する耐性はありますが、適切な水分供給が要ります。(2017年5月15日号)
品種 コラティーナ
オリーブの品種コラティーナはイタリアの代表品種です。オイルの量が多く、ポリフエノールの量も多く苦み・辛みが強いのでブレンド用にも使われる品種です。
木は普通の成長力ですが、比較的容易に異なる栽培環境に適応し、発根力も強い品種です。樹形は広がる型です。自家不和合で、受粉木が必要です。イタリアではもう一つの代表品種セリナ・ディ・ナルドが受粉木としてよく使われています。実は比較的大きく、熟するのは晩生で遅くまで緑なので、テーブルオリーブにも使われます。(2017年5月15日号)
品種 アルベキーナ
オリーブの品種「アルベキーナ」は、スペインのカタルニア地方アルベカで発見され、今や同地方を代表する品種となりました。スペインの国外でも多く栽培されています。アルベクイーン、ブランカルという別名でも知られています。
寒さと塩分には強い品種ですが、石灰質の土壌では石灰が添加する萎黄病になりやすいです。木の成長は遅く、樹形は広がる形です。自家和合とみられています。結実は早く成熟も早い方で、安定した生産量が期待できる品種として知られています。果実は小さく、オイルの含有量は多い品種です。オイルはフルティーですが、総ポリフェーノルは多くない品種です。
17世紀にイベリア半島を所有していた公爵が、エルサレムを訪問したおり、食べたオリーブオイルが気に入り、そのオリーブの種を持ち帰り、畑に植えて育てたのが始まりと言われています。(2016年9月15日号)
品種 フラントイオ
オリーブの品種「フラントイオ」は、イタリア原産種で、トスカニ地方ではフルーティーなオイルが安定した期間取れると言うことで高い評価を得ています。発根力が高く、早い時期から結実します。開花の時期は普通で、雌しべがだめなる率は低いです。自家和合性ですが、適当な受粉樹があると生産性が高まります。
果実が成熟するのは遅いです。中程度のオイルを含みます。この品種は高く安定した生産性と適合性が高く評価されていますが、オリーブ斑点病・癌腫病・ミバエに弱く、また寒さに弱品種いです。
非常に多くの亜種があり同じ性質です。最近の研究で別品種と思われていた「オブロンガ」は同一品種であると分かってきました。またフラントイオは、オリーブオイルの「搾油所」を意味するイタリア語でもあります。(2016年8月15日号)
品種 コラティーナ
オリーブガーデンが新品種としてオイル販売に加えた品種「コラティーナ」は、イタリア南部でブーツのかかとに喩えられる地域プッリャ州が原産地の品種です。「オリボ・ア・グラポリ」「ラセモ」などたくさんの同意語があります。
さまざまな栽培環境に適応し、成長も早く、樹形は広がるタイプで、実がなり始めるのが早い品種です。その実は多
く、安定した量が取れます。実も一個4-6gと重い分類に入り、オイル含有量も多く、またポリフェノールが多く含まれているので、そのオイルは苦み・辛みが強いのが特徴です。このため、オイルはブレンドされることが多いです。比較的遅くまで実の色がグリーンなので、グリーンの風味が残るオイルになります。(2016年4月15日号)
品種 ピシュリーン
オリーブガーデンが新品種としてオイル販売に加えた品種「ピショリーヌ・ラングドック」は、フランスの主要な品種で「ピシュリーン」とも呼ばれています。地中海沿岸やイスラエルで広く栽培されています。オイルはフルーティーで“シェフが好んで使うオイル”の一つです。
栽培の手間はとてもかかりますが、丈夫でさまざまな環境に適応する能力があり、寒さ、乾燥にもある程度の強さがあります。発根力は普通です。灌漑をするとよく実をつけ安定した収穫量を得ることができます。花の時期は普通で、花粉の受粉力は高いです。熟す時期は遅いです。緑の塩蔵オリーブを作るために使われます。最高品質のオイルが取れますが、抽出は難しいです。
「ピシュリーン」にはもう一つモロッコが原産の「ピシュリーン・マロカイネ」があり区別されます。この品種からとれるオイルは良質で、さらに零下12度でも凝固しない性質があり、缶詰製品に多く用いられています。
品種 シプレシーノ
オリーブ盆栽展で作品が多くみられた「シプレシーノ」は、イタリア南部のプッリャ州が原産の品種で「フランギベント」が正式な名称です。◎成長力は強く、真直ぐ上に伸びる性質があります。葉はやり状に先がとがった形で、灰色がかった濃い緑色が特徴です。常にたくさんの花が咲きますが、実になるのは半数程度です。自家不稔性で、他の品種フラントイオ、レッチーノ、ペンドリーノが授粉木として知られています。
オリーブオイル生産用の品種ですが、その直立に伸びる性質と風に強いことから、防風林として使われている例も多くあるようです。実際その名前「フランギベント」の意味は “wind break”で、まさに風よけです。また同義語の「シプレシーノ」もその樹形から“サイプレス(糸杉)に似ている木”」からつけられた呼び名です。(2015年11月15日号)
品種 アルベキーナ
開催中のオリーブ盆栽展で「小さくかわいい」と好評のロマン派盆栽に多く使われている品種アルベキーナはスペインを代表する品種の一つです。別名ブランカルとも呼ばれ、スペインのカタロニア地方やアンダルシア地方で大規模に生産され、さらに南米アルゼンチンでも主要品種となっています。
この品種は耐寒性が高くさらに塩分に対する耐性も強い品種ですが、石灰質が強い土では細菌に感染しやすくなります。萌芽力があり、木が若くても花をつけます。花の咲く時期は普通ですが、早く結実します。(自分で授粉できる)自家和合の品種です。
実際、盆栽作家の冨澤亮司さんは、「アルベキーナは盆栽で実をつける確率が8割を超え、盆栽も作りやすい品種」と言っています。◎実は小粒(重さ1gから2g)で丸い球状で、まさに“かわいい”と言えます。オイルの含有量も多い品種です。(2015年10月15日号)
品種 コロネイキ
オリーブの品種コロネイキは、ギリシャのオリーブの中でもっとも一般的な品種で、ギリシャのオリーブ栽培面積の50から60%を占めます。1950-60年に日本を含む7ヶ国で心臓疾患調査が行われ、ギリシャのクレタ島の人々が長寿で心臓疾患も少ないと分かりました。そこで食事に注目し、1990年代に「地中海型食生活のピラミッド」が発表されました。クレタ島、ペロポネソス半島、キントス島はこのコロネイキの産地です。
乾燥には強いですが、寒さには弱い品種です。発根力は普通で、開花の時期が早く、実も早くにつけます。花粉量は多いです。コロネイキの実は約2g以下ととても小さくて長く、ゆっくり熟します。他の品種とは異なり、コロネイキは熟しても緑色で独特の風味があります。熟す時期は、早生から中生です。収穫量は多く安定しています。
取れるオイルの量も多く、オイルの評価も高いです。抗酸化作用があり体によいことで知られている
ポリフェノールとオレイン酸を豊富に含んでいます。(2015年9月15日号)
品種 ミッション
オリーブの品種ミッションは、その名前がキリスト教の伝道団を意味する英語ミッションが示すようにスペイン系の米国産種です。1906年に米国から苗木を輸入し鹿児島、香川、三重県で試験栽培を始めたこともあり、現在日本でも多く栽培され、また鉢植えでも販売されています。
この品種は、耐寒性が高く、樹形は直立性で、収穫に機械を使うこともできます。5月後半に花が咲き、自家和合性の品種です。果実の香りも良く、テーブル用(漬物)にもオイル用にも用いられます。実が熟するのは遅く、熟した実のオイル含有率は22%にもなり、そのオイルの品質も高いです。多雨の地域ではオリーブ炭疎病に注意が必要です。
小豆島の栽培農家高尾農園は、2015年4月ニューヨークで開催のオリーブオイルコンテストでこのミッションのオイルで最高賞を受賞しました。(2015年8月15日号)
品種 バルネア
オリーブの品種バルネアは、新しく交配されたもので、交配区画の番号だった「K18」としても知られています。常に収穫量が多く、また、収穫に機械を使うことができるので、イスラエルの新しい灌漑農場に普及し、オーストラリア、中国などでも広がっています。オイルを作るために交配された品種ですが、摘果作業を行えば、緑と黒の塩蔵オリーブを作ることもでき、黒の塩蔵オリーブは高い評価を受けています。オイルは良質で、種離れのよい実です。
ある程度丈夫な品種で、発根力が強く、栽培環境が良いと3年目から結実するようになります。栽培には手間を必要とし、灌漑しない場合は、一年おきの収穫量の差が大きくなります。自家和合性を持つことがあり、不完全花の割合は普通です。花粉の量も普通で結実の可能性はとても高いです。一番の特徴は、オリーブ斑点病に非常に強いことです。
オイルは、初めは緑の香りでほろ苦い味があり、徐々にピーマンやアスパラガス、そしてエキゾチ
ックな果物のような実に幅広い風味です。(2015年7月15日号)
品種 ソウリ
ソウリ(Souri)はおそらく世界で最も古いオリーブの品種です。中東では最もポピューラーな品種で、イスラエルでも広く栽培されています。エルサレムのオリーブ山の麓にある“ゲッセマネ庭園”の“ゲッセマネ”とは、ヘブライ語で「オリーブの油絞り」の意味。エルサレムのオリーブ
はほとんどがソウリ。
今も残るオリーブの古木は樹齢千年以上といわれています。ソウリの果実は中粒で細長く丸い形です。新鮮なオリーブのグリーンの風味と強い緑のオリーブの味、そして苦味はほとんどなく、わずかに辛みです。(2015年2月15日号)
品種 アスカル
アスカル(Askal)はイスラエルの生まれの新種で、バルネアとマンザニーロの交配種でイスラエルで特許がとられている品種です。果実はバルネアに似た楕円形でオイル抽出に優れています。そのオイルはスパイシーでビターが特徴で、フルーティーなオイルに慣れている人には、その強さと香りが新鮮な驚きです。(2015年1月15日号)