オリーブオイル 取引基準
オリーブオイルには国際的品質規格と取引基準があります。法的実効力があるのが欧州連合EUが定めている規則(EU規制2568-91他)です。オイルをエキストラバージンを始めとする8タイプ(下の表)に厳密に分類して、メーカーが守るべきオイルの品質特性、商品としてのラベル表示や梱包基準が定められています。
国際オリーブオイル協会IOCは「オリーブオイルとオリーブポマスオイルの取引基準」を定めオイルメーカーや他の国にこの規則をガイドラインとし適用するよう勧めています。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同でつくった食品規格CODEXは、オイルを7分類してEUと同様の基準を定めています。(2020年1月6日号)
オリーブオイル 搾油新技術
オリーブオイルの製造工程にも更なるハイテクの時代がきています。オリーブの実はグラインダーなどで粉砕し、そのあと練り込んで油を抽出しています。この実を超音波振動で粉砕する装置をドイツの超音波技術会社ヒールッシャーが開発しました。
“ソニケーション”(Soni-cation)は、高周波音による分解を意味する専門用語ですが、このソニケーション技術でオリーブの実を粉砕するとオリーブの実に含まれる抗酸化物質を壊すことなく多く取り出せ、オイルの収量も上がると開発メーカーは述べています。
オリーブ油に含まれるポリフエノールの量は、品種や栽培地の天候環境、収穫時期で変わりますが、搾油工程でもよりポリフエノールが多いオイルを製造することが可能になると期待されており、既に実用が始まっています。(2019年9月15日号)
オリーブオイル オレオカンタール
オレオカンタール(C17H20O5)(Oleocanthal、下図)は、エキストラバージン・オリーブオイルから抽出された天然有機化合物であり、チロソールエステルの一種で、その化学構造はオリーブ・オイルから発見されたオレウロペインに類似しています。オイルのかすかにピリリと刺激のある味の原因物質です。
最近の研究では、免疫低下に係る疾患の治療効果があり、アルツハイマーの原因と言われるアミロイドβの蓄積を阻害することが報告されています。
更に選択的細胞毒性があり、健康な細胞を残しガン細胞を選択的に死滅させる能力があるとの報告もあり、医薬品の将来性があると見込まれ、C-Met阻害薬(ガン)、モノクローナル抗体による治療薬など商品化を目指した研究が行われています。(2019年8月15日号)
オリーブオイル ポリフェノール
1950-60年に日本を含む7ヶ国で心臓疾患調査が行われ、ギリシャのクレタ島の人々が長寿で心臓疾患も少ないと分かりました。そこで食事に注目し、1990年代に「地中海型食生活のピラミッド」が国際会議で発表されました。この食生活では「油脂類の主たる摂取源としてオリーブオイルを用いる」と決められ、その効用が広く知られました。
実際エキストラバージンオリーブオイルには、血中コレステロールを下げるオレイン酸が70~80%も含まれており、米国の食品医薬品局が2004年に「オリーブオイルは冠動脈心疾患のリスクを減らす」と表示してよい、と認可しました。抗酸化作用のあるポリフェノール、トコフェロール(ビタミンE)や保湿成分のスクワレンも含まれています。(2019年6月15日号)
オリーブオイル 品質評価機、コンティナー
COOC総会のオリーブ関連商品の展示会からいくつかを紹介。
オリーブオイルの評価を専門の検査機関ではなく、自分でテストするOXI Tester(クオーツアナリティック社、米国ミシガン州)。オイルの酸度、総ポリフェノール量などが測れる。
小規模農家が持ち込むオリーブを搾油するが、誰も持ち帰る容器を持ってこないので、元商社の経験を活かし中国で手ごろなステンレスタンクを開発したKiler Rigde。(2019年4月15日号)
オリーブオイル 搾油の滓
オリーブオイルは収穫した果実を洗浄し、圧搾しそのペーストを撹拌します。この過程で抽出したオリーブオイル以外にオリーブミルウオーター(OMW)と呼ぶ植物性の水とオリーブオイルポーマス(OP)と呼ぶ絞り滓が出ます。
オリーブオイルにも多くのポリフェノールなどが含まれていますが、この水と搾り滓にも多くのタンパク質、脂肪類、炭水化物、セルロース、水に溶けないリグニン(繊維質)、多くの種類のポリフェノールが残っています。オリーブオイルだけではなくワインの絞り滓
などでも廃棄物を再利用する処理が検討されています。(2018年7月15日号)
オリーブオイル ポリフェノールの量
エキストラバージンオリーブオイルは生産地の天候や標高などでポリフェノールの成分構成が変わると最新の研究報告です。
最近オリーブ栽培が広がるブラジルとスペインからのオリーブオイル生産代表的品種アルベキーナのオイルのトコフェノールなどポリフェノールの量を測定。全てのサンプルに48-85㎎/Lのポリフェノールが含まれていましたが、標高が高く雨が少ないスペイン産の方が多くのポリフェノールを含んでいると報告。標高はポリフェノールを増やし、多雨は負の効果をもたらすと述べています。
オリーブオイル ポリフェノールの量
オリーブオイルには品種や栽培環境でその成分に違いがあります。エキストラバージンオリーブオイルの特徴である辛み・苦みは、オレオカンタールなどのエキストラバージンオリーブオイルだけに多いポリフェノール(色々なフェノール類の総称)やトコフェノール(ビタミンE)に起因します。これらは、オリーブの品種で含有量が異なります。
欧州連合EUの規定では、オイル1Kg あたり250mg以上のポリフェノールが含まれていることが「健康に良いオイル」と言える必要条件です。
2016年6月開催のOISの評価基準は、250-500mgが銅賞、501-1,000mgが銀賞、1,001㎎以上が金賞でした。325のメーカーから565のオイルが参加。総ポリフェノールの最高値はギリシャオリンピアで最近見つかった品種で作られた3,076mg/Kgでした。(2016年6月15日号)
オリーブオイル 健康な食べ方
米国ハーバード大学公衆衛生大学院栄養学部では、推奨される食生活「My Healthy Eating Plate」を提案しています。これは従来からある米国農務省USDAが推奨する「MyPlate」とは異なり、政治的意図を排除し最新の研究成果から得られた健康的な食べ方を提案しています。
「健康な食生活には全粒穀物、ヘルシーな蛋白質、野菜、果物、健康なオイル、水分を 摂ることが大事。適切な体重を維持するには食生活が半分、残り半分は活動をすること(Stay Active)」と提言しています。
「Healthy Oilとしてはオリーブオイル、菜種油や植物油を料理、サラダ、食卓で使う。バターは控えめに、トランス脂肪酸は避ける」と健康によいオイルの摂取を推奨しています。健康に良いオイルはコレステロールを減らし心臓によいが、多くのアメリカ人は摂取が十分ではないと指摘しています。(2015年7月25日号)
オリーブオイル 地中海型食生活
1950-60年に日本を含む7ヶ国で心臓疾患調査が行われ、ギリシャのクレタ島の人々が長寿で心臓疾患も少ないと分かりました。そこで食事に注目し、1990年代に「地中海型食生活のピラミッド」が国際会議で発表されました。この食生活では「油脂類の主たる摂取源としてオリーブオイルを用いる」と決められ、その効用が広く知られました。
古代ギリシャ医学の父と謂われるヒポクラテスがオリーブオイルを「偉大なる医薬」と言いましたが、実際エキストラバージンオリーブオイルには、血中コレステロールを下げるオレイン酸が70~80%も含まれており、さらに抗酸化作用のあるトコフェロール(ビタミンE)やポリフェノール、保湿成分のスクワレンも含まれています。
昔から皮膚や髪の毛のケアにも使われ、日本薬局方でも以前から認可されています。(2015年4月15日号)
オリーブオイル 揚げ物・炒め物
オリーブオイルは炒め物・揚げ物など加熱料理にも向いています。健康によい不飽和脂肪酸のオイルでも加熱によって酸化する亜麻仁油やシソ油は、冷蔵庫で保存しながら食事の時にテーブルオイルとして、ドレッシングやマリネなどに向いています。オリーブオイルは、テーブルオイルとしても優れていますが、加熱しても安定しており、加熱料理に向いています。
油は加熱し続けると煙が立ち始め(この温度を発煙点と言います)、発火点の温度に達すると発火します。揚げ物は180℃前後で調理しますが、オリーブオイルの発煙点は190℃から210℃と高く、短時間で食材の風味を失うことなく揚げることが出来ます。
唐揚げが大好きなキッズのためには加熱料理にエキストラバージンオリーブオイルを使うことがよいと専門医も奨めています。(食生活:伊藤明子東京大学小児科医師)(2015年3月15日号)