スペインとイタリアにおけるオリーブオイルの未来 ー 歴史と気候変動への対応
スペインとイタリアはオリーブ栽培の長い歴史を持ち、オリーブに最適な気候条件のおかげで、濃厚で個性豊かなオリーブオイルを生産してきました。しかし、両地域とも深刻な不作に見舞われ始めています。スペインでは、2021年と2022年に発生した壊滅的な長期干ばつで、平年比で50%減少し、イタリアでも猛暑により、2024年産の収穫量は前年比で約3分の1に減少すると推定されています。
◎猛暑のリスク:両国で気温上昇の頻度と期間が拡大しています。オリーブの木は、特に猛暑が数日間続くと、より大きな熱ストレスにさらされ、冬の温暖化は害虫の発生リスクを高め、開花に必要な冬の「冷涼時間」を減少させています。猛暑ではオリーブの実は早く熟すため、成熟した風味が十分に発揮される前に収穫する必要があります。
◎干ばつ: スペイン南部では、1年以上続く干ばつの確率は、過去大半の地域で約20%でしたが、地球の平均気温が1.5℃近く上昇した現在では、大半の地域で40%以上に上昇しています。2040年代に地球の平均気温が約2℃上昇すると、スペイン南部のほぼ全域で干ばつの確率が50%を超えると予想されています。干ばつはオリーブの木にストレスを与え、灌漑用の水の供給を減少させ、高品質のオリーブ油生産に必要な繊細なバランスを崩します
◎高温に耐性のある品種の開発、剪定技術、収穫時期と搾油工程での対応やまだ想像つかない選択肢も含め対応が求められています。
- これは気候変動によりスペイン南部の干ばつのリスクがどのように変化しているかを示す地図です。
UCDAVIS
米国カリフォルニア州立大学デイビス校のUCデイビスオリーブセンターは、2025年のオリーブ公開講座4コースの受付を開始しました。
- 剪定と生産性が劣る木の再生 5月7日
- オリーブ工場の副産物の利用 7月11日
- オイル生産のオリーブ栽培 8月1-2日
- 最先端の搾油技術 9月12-13日
オリーブオイル生産の攪拌工程
スペインコルドバ大学の新たな研究によると、オリーブオイル生産で実を粉砕して攪拌するマラキセーションの工程は、特にセコイリドイドをはじめとするオイルのフェノール組成を決定する上で重要な役割を果たしていることが示唆されました。マラキセーション中の温度、時間、酸素曝露、加水といった要因は、オリーブオイルの官能特性や健康特性に関連するフェノール化合物の含有量と組成に影響を与えます。本研究は、エキストラバージンオリーブオイルのフェノール含有量と全体的な品質を最適化するために、オリーブの品種、環境、加工方法を考慮することの重要性を強調しています。
オレア・オリーブ
バイオ炭とは、バイオマス(木材、農作物残渣など)を酸素の少ない環境で加熱し炭化させた固形物です。主に土壌改良材として使用され、土壌の肥沃性向上や温室効果ガスの削減に役立つと注目されています。
さらに大気からCO2を直接回収する方法は近年研究されている最も有望な方法の一つです。オリーブ搾り滓バイオ炭を水酸化カリウムKOHで活性化し、CO2吸着剤として使用する研究では、元のバイオ炭と比較して、より高い表面積と微細孔容積作ることができました。KOHで活性することで処理済みバイオ炭の表面に微細孔構造が形成され、空中からのCO2吸着速度が著しく向上しました。
- https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383586624017362