人工知能AIの深層学習:オリーブオイルの偽装オイルの判定
オリーブオイルは世界的に偽装が多い食品の一つです。オリーブオイルの食品偽装は化学処理や熱処理によって行われていることが多く、栄養価の低下と消費者の深刻な健康リスクを引き起こします。
トルコのイスタンブール技術大学の研究者達は、スマートフォンの画像1枚から偽装品の判別とオイルの品質の両方を即座に判断できる新しい方法を開発し、迅速でユーザーフレンドリーな方法を提供できると報告しています。
水面に分散した1滴のオイルの画像を解析することにより、数秒で食品の偽装を迅速かつ正確に検出する方法です。水面上に垂らしたオリーブオイルが界面張力のダイナミクスの影響を受ける現象を捉えた画像分析に、AIを活用しています。クラスタリングモデルと畳込みニューラルネットワーク(CNN)という2つのAIの機械学習方法を採用しています。これらのAIモデルで、オリーブオイルの品質を99%の精度で分類することができました。
水面に垂らしたオイルの分散パターンは、高品質のブランドと低品質のブランドで異なっていました。高品質のオリーブオイルの液滴は、パターン内で均一に分布しましたが、低品質のオリーブオイルは、撮影した画像全体で不均一に分布しました。この観察を正当化するために、画像のより小さく複雑な特徴を識別できるクラスタリングと深層学習モデルを生成し、モデルの全体的な精度を約 99% まで向上させています。
2024/25年産オリーブオイル生産量増加
オリーブオイルの生産量は過去60年間で3倍に増加し、2022/23年には276万トンに達しました。一昨年の2023/24年では生産量が7%減少して256万4000トンとなりましたが、最新の2024/25年収穫の推定では生産量は337万5500トンに達すると見込まれています。
カメムシがイタリアに到達、オリーブに被害
近年、北イタリアのオリーブ畑で果実が未熟のまま落ち、それに伴う生産量の低下が報告されています。過去1年間の研究で、学名Halyomorpha.halys、クサギカメムシが主な原因であることが強く示唆されました。
中国、日本、朝鮮半島、その他のアジア地域に生息するこのカメムシは、1990年代後半に北米に偶然持ち込まれたと考えられ、更にスイスを経由してヨーロッパ大陸に、2021年までにイギリスに到達、さらにトルコにも到達してヘーゼルナッツの収穫量が20パーセント減少したと報告されています。
ヴェローナ大学とパドヴァ大学の研究で、存在するカメムシの数と未熟に落ちた果実の程度との間に強い相関関係があることが分かり、オリーブの種が完全に固まる前の果実発育の初期段階でカメムシの食害により種子が壊死し、木が未熟な状態の果実を落とす原因となったことが判明しました。
オレア・オリーブ
イタリアのカメムシ被害の研究論文ではその対策も研究しています(右のグラフ)。殺虫剤散布ではカメムシの個体密度が部分的にしか減少せず、ネットによるカメムシの物理的排除は殺虫剤散布よりも効果的で、現在の殺虫剤散布に基づく対策を見直す必要があることを示唆しています。ネットの内側でオリーブが落下したのは、満開後約35~45日の間に通常進行する自然な生理落下と非生物的要因の影響による可能性が高いことを強調しておく必要があるとも指摘しています。