苗木 イタリア SPO

イタリアのフィレンツェから電車で1時間、トスカーナ州ペーシャの町で1932年から続くオリーブ専門の苗木会社SPO(Societa Pesciatina d’Olivicoltura)を訪問する機会がありました。

この会社では、25エーカーの敷地で、主要46品種(オイル用29、テーブル用7、兼用10品種)を生産しています。苗木は、挿し木(cuttings)と、1875年にこのペーシャの地域に導入された伝統の接ぎ木 (grafting)の二つの方法で生産していました。伝統の方法では、種を抜いてオリーブオイルを作るオイル農家から種を購入して、種から接ぎ木の台木を作成しています。

大学とトスカーナ地方の品種の共同研究も行っています。(2020年3月15日号)

植物特性 気温

オリーブは亜熱帯性の植物で、夏の高温に強い印象がありますが、光合成に最適な温度は15℃から30℃と言われ、気温が35℃を超えると光合成が70-80%に阻害されます。一方オリーブにとっての冬の理想的気温は、2℃から18℃で、この寒さが続く開花に必要と言われています。

品種による違いがありますが、一般には若い木や枝は気温-6℃以下になるとダメージを受け、さらに―9℃以下が続くと凍裂すると言われています。(2018年10月15日号)

植物特性 花

オリーブの花は前の年に伸びた枝に咲きます。一つの花序(花の咲く部分)には約10~40の花が咲きます。この数は品種、木の状況と環境で左右されます。こうして咲いた花には、完全な花(パーフェクト)と不完全な花があります。完全な花は雌雄同化すなわち雌雄が同体です。

不完全な花は男性の花と呼ばれ、雄蕊だけで子房が未発達かあるいはまったくない状態の花です。平均すると50%あるいはそれ以上が不完全な花とスペインコルドバ大学のラロー教授は述べています。

成長した木には、約50万個の花が咲き、満開から2週間後には約49万4千個の花が離層形成(柄の部分に出来る柔らかい細胞層)で脱落すると言うことです。(2018年5月15日号)

栽培 灌水

夏の時期、オリーブの果実を大きくするためにも適切な水やりが必要です。6月から収穫まで適切な水分が不足すると、実の細胞の数が増えず、さらにその細胞も小さいままになります。表はオリーブの成長プロセスと土壌水分の不足の影響を示したものです。

栽培 剪定

古代からオリーブの剪定の必要性と正しく行った時の良好な収穫は伝えられ、紀元前3世紀のスペインの学者が、引用している有名なことわざがあります。「オリーブ園を耕す者は実を望み、肥やしをやる者は実を懇願し、剪定をする者は実りを強いる。」

オリーブ剪定の最大の目的は、葉/根のバランスと葉/木のバランスを整えて、オリーブに新たな萌芽を促し、オリーブの実の生産を最大化し、それを継続させる事です。

剪定教室のビデオ3編(樹形を整える剪定、剪定を仕上げる、間引く剪定)を公開しました。ご覧ください。 (2017年3月15日号)

栽培 土壌pH

土壌のpH(物質の酸性・アルカリ性の度合いを示す)は、土壌中の栄養素の溶解性や微生物に影響し作物の生育に大きく影響します。降雨量が多い日本は酸性化しやすいですが、ビニールハウスなどの施設ではアルカリ性化しやすいです。

作物には種類別に好適なpHがあります。オリーブはpH5.5から8.5の土壌で育つことができると言われていますが、産地はpH7台の所が多いようです。聖書に記述のあるブドウ、イチジク、オリーブの好適pHはほぼ同じで、栽培の歴史と繋がっています。(2017年3月15日号)

栽培 病害虫

植物防疫法が改正され、2017年5月から多くの植物輸入で「Eutypa lata (日本の名前がない)」病原菌と「ブドウオオハリセンチュウ」の検査を事前に輸出する国側で行い、その検疫証明書がない苗木などの植物は輸入できなくなりました。オリーブも対象となりました。

Eutypa lataは、かいよう病を起こし、樹液の漏出や枝枯れを起こします。世界的にはブドウ、アンズ、サクランボの生産に影響がでています。

もう一つのブドウオオハリセンチュウは、根に口針を刺して養分を吸収する外部寄生する線虫です。ブドウが罹るウイルスの媒介線虫として知られており、ブドウでよく増殖し、被害も大きいと報告されています。(2016年7月15日号)

苗木 スペイン 組織培養

オリーブの苗木を最新の組織培養技術で作る方法があります。植物組織培養とは、ガラス容器などの無菌的空間に、植物が成長するのに必要な養分などが入った培地を入れ、その中で植物を培養し栽培する技術です。

コテビサは、スペインでこの技術で最大手の会社で、果樹や野菜などの100を超える品種を生産し、6千万以上の苗木を出荷しています。この技術では、最初に遺伝的に良い個体を選び、それを20年来の実績で培われた培養環境で育てることがポイントだとガルシア社長は言います。同社では、スペインのオリーブ栽培の主要品種を選び、それを組織培養で育成しています。(2016年2月15日号)

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